UFC応援コラム

UFC.21 「原付にぶつかったほうがまだ軽傷で済みそう。」

皆様こんにちは、株式会社ユークスのヤマチューです。

さて今回は、TUFシーズン10序盤最大のハイライトであろうキンボ・スライス vs ロイ・ネルソンについて語らせていただきたいと思います。

チームランペイジ、キンボ・スライス。

僕が彼を初めて見たのは、彼自身がYouTubeにアップしたベアナックルボクシングの動画でした。
その動画を見た印象ではキンボはまさしく獣。圧倒的なパワーで相手を殴り飛ばすその様はかなり野性的でした。

しかし、TUFを見て彼の印象はガラリと変わります。
『自分のことをビッグスターだと思っていない。最強だとも思っていない。生まれついての喧嘩屋みたいにイライラしていない。平和主義さ。俺は、ただ純粋に戦いが好きなだけだ。』

全米で人気者のキンボ・スライス。街に出ると声をかけられ、ベタベタ体を触られます。
彼はその中でも自分を見失わない強さを持った人間でした。僕ならばそれだけチヤホヤされたら全てを見失います。前後不覚に五里霧中のフルコースです。

コーチのランペイジも最初はキンボのファイトスタイルが好きだ、と言っていましたがエピソードが進むにつれ内面について語り出すシーンが多くなります。
『キンボは謙虚で素直だ。向上心が強く、知ったかぶりをしない。穴だったレスリングもグングン伸びているし、本当に教えやすい。』
そうカメラの前で語るランペイジは父親のような顔をしていました。
『将来はお父さんと結婚するーぅ』と娘に言われた父親のような顔をしていました。

TUFシーズン10の初回。厚遇を受けるキンボ、それを疎ましく思う他のファイターという構図ができていました。
誰もがキンボを狙っていました。
『キンボと戦いたい。スタンドは脅威だがレスリングは素人だ。』、『キンボなんてただの喧嘩屋だ。チヤホヤされて気にいらねぇ。』、そういった声が多くのファイターの口をついて出て来ていました。

周りは敵だらけ、対キンボ戦線が敷かれる中、そんな状況でキンボは言いました。

『敵を倒したくて戦っていた。でも敵って誰なんだ。考えに考えた末にたどり着いた。敵は俺の中に居る。自分自身だ。敵は、俺なんだよ。』

胸に拳をぶつけながらそう語るキンボを見て、僕はTUFシーズン9のフランク・レスターを思い出していました。
前歯全部失いながらも何度も立ち上がり、対戦相手への愛で戦ったフランク・レスター。
彼へ感じたような、熱くなる思いをキンボ・スライスにも感じました。漢です。漢。

気付けばキンボの周りに人が集まるようになっていました。

気付けば誰もキンボの実力を軽んじる者は居なくなっていました。

彼の人柄に触れ、彼の成長を見て、周りもまた変わっていったのです。

キンボの最大の武器はその剛腕ではなく、強靭なメンタル。そこに惚れます。
目を潤ませながらゴツいヒゲモジャの男性を見る自分。
いいんです。キンボが好きなんです。

チームラシャド、ロイ・ネルソン。

彼もまた、キンボ・スライスに負けない個性の持ち主です。
元IFL世界ヘビー級王者で柔術黒帯。実績的にも経験的にもUFCトップファイターと遜色ないレベルの人物。

故に、コーチであるエヴァンスとの衝突が頻繁に起こりました。

『俺はそのトレーニングはしない。そんなことやっても意味がない。』
『俺はお前達コーチ陣よりも経験豊富だ。』

経験を積んできたロイのプライドが、他のファイターと同様の基礎訓練をさせられることを許さなかったのでしょう。
課されるメニューが納得いかなければロイはテコでも動きません。頑固一徹です。

ロイ・ネルソンは今まで何もかもを1人でやってきたと言います。
1人で練習し、1人でスポンサーを見つけ、1人で大会を主催して、1人で戦ってきたのです。
それゆえに譲れないものもあったのでしょう。

エヴァンスとアシスタントのコーチ陣はそんなロイに対して、小細工なしで真っ向からの話し合いの場を設けました。
『お前のそういうところが気に食わないんだよ!!』
『ここは遊びじゃないんだ! 遊びのつもりならやめろ!』
『今すぐランペイジにお前が必要かどうか聞いてやる! そっちのチームへ行け!』

一番怒っていたのはエヴァンスではなく、アシスタントコーチでした。
あまりのブチギレっぷりにロイもしゅんとしていました。聞いているだけで僕もしゅんとなりました。
このアシスタントコーチ、その名をグレッグ・ジャクソンと言います。エヴァンスやGSPを育てた名伯楽、格闘技界では超有名な指導者です。

コーチ陣が正面からぶつかった後、ロイの態度は次第に軟化していきました。

『俺も達人、あの人たちも達人。それなら互いに技を見せ合って、一番良い方法を探せばいいんだ。』

恥ずかしそうに喋るロイの言葉を聞いた瞬間、僕はもうTUFシーズン10の虜です。
共同生活、共同訓練のTUFだからこそ起きたロイ・ネルソンの化学反応。
シーズン9も最高でした。シーズン10も最高です。人間の成長というものはなんでこんなにも心を打つのでしょうか。

『ロイは独立心が強く、なんでも一人でやりたがる。彼に教えるには信頼される必要がある。俺たちにはそれができたんだ。』
凄い才能を持っている、エヴァンスも常にそう言っていました。その実力は誰もが認めるところなのです。
一人で生きて、一人で戦ってきた男が、信頼できる仲間を得て大きく成長したのです。

 

TUFシーズン10の顔といっても良い二人の対戦は、膠着状態から始まりました。

経験豊富なロイは間合いを計るジャブで、キンボの得意な戦いをさせません。
しかしそこは、接近戦が売りのキンボ。ジャブをかいくぐってパンチを叩き込みます。

かろうじて直撃を避けるロイでしたが、バチンっと凄い音。
多分僕が当たれば死にます。原付にぶつかったほうがまだ軽傷で済みそう。

ロイはキンボの打撃を何発かくらいながらもクリンチ。金網に押し付け、キンボの身動きを取れなくします。
本当にうまい…。キンボは全く身動きとれないままテイクダウンされ、グラウンドに持ち込まれます。

グラウンドでもロイはサラベリーポジションでキンボの自由を奪い、そのままコツコツとパンチを当て続けます。

『相手を倒すパンチ』ではなく、『レフェリーに試合を止めさせるためのパンチ』です。技アリ。

キンボがその状態から抜けられないと判断したレフェリーは、試合をストップ。
全米が注目した試合は、TKOでロイ・ネルソンの勝利となりました。

キンボの持ち味を殺し、最小限の力で自分のストロングポイントを活かしたロイ・ネルソン。
まさしく経験の勝利といえます。

勝利したロイはテンション急上昇、『ハンバーガー10個!チーズ山盛りでよこせ!王様はいくらでも食える!』
とダナ・ホワイトに向けて猛烈アピール。つくづくおいしいキャラクターです。可愛らしい。
しかし、当のダナはロイの消極的なコツコツパンチに大層お怒りのご様子。この二人の関係性は後々ポイントになってきそうな気がします。

反面、ダナはキンボに対しては『キンボ・スライスは進化と成長を見せた。TUFでは何が起こるか解らない。キンボにチャンスがないわけじゃない。』と敗者復活を示唆するような発言も…。
そしてランペイジも『負けちまったけど、俺は今でもキンボを誇りに思ってるよ。』と最大級の褒め言葉。

キンボ・スライス、負けはしましたがこのまま終わりそうにはありません。
そしてロイ・ネルソン、圧倒的な実力を見せつけました。このままどこまで昇るのか。
TUFシーズン10、ここからの展開が楽しみです!!

ということで今回はここまで。次回もお付き合い宜しくお願いします。